音楽療法でコミュニケーションの力は伸ばせますか?
はい、音楽療法では、言葉の出ない方、重度知的障がいのある方であっても、
その方なりの方法でコミュニケーションの力を伸ばすことを意識したアプローチが可能です。
例えば、自閉スペクトラム症の方で、
発語がなく、視線も合わせられず、
重度の知的障がいがあって言葉での指示も理解が難しい、という状態の方であっても、
音や歌を拒まない方であれば、
音や歌を通して、その方なりのコミュニケーションの糸口を見つけていける可能性があります。
ただ、音楽療法は魔法ではありません。
長い時間がかかることも少なくありません。
しかし、音楽療法士がクライエント(対象の方)をよく観察し、理解に努め、
寄り添って根気強く、専門のスキルを用いて関わりを続けることで、
障がいの程度がかなり重度の方でも、
その方なりの方法で、他者とコミュニケーションを結ぶ力を育むことが可能です。
そのためには、保護者あるいは所属の施設の方の御理解と御協力が必須ですが!!
「言葉」とは何か?
「コミュニケーション」とは何か?
クライエント(対象の方)によって、その方にとっての「言葉」や「コミュニケーション」をどうとらえるか。
その共通理解も大切だと思います。
発語がどうしても難しい方に
自在に話せるスキルをつける、というのは、
少なくとも音楽療法では困難です。
でも、誰かに自分の思いを伝えたいという意欲を高め、
言葉の代わりに、声や、歌や、音や演奏で伝えたり、やりとりしたりできれば、
それは、他者とのコミュニケーションの入口となり、
やがては日常生活の中で身近な人とのコミュニケーションにつながっていく可能性があります。
私の息子は、とっくに成人していますが、一言の言葉も話すことはできません。
でも、「あ」という発声だけで共に歌い、返事をし、意思を伝えることができるようになりました。
ピアノを一緒に弾き、楽しむこともできるようになりました。(ドレミファソしか弾けませんが!)
音楽療法は「魔法」ではありませんが、
私は、「希望」だと考えています。
もみの木音楽舎に通ってこられる方には、
「希望」をもっていただきたい。
そう思いながら、今日も音楽療法セッションに取り組んでおります。
★障がいのある方のための音楽療法については、
遠山文吉編著『知的障害のある子どもへの音楽療法-子どもを生き生きさせる音楽の力』
(2005年4月 明治図書) をぜひ御一読ください。
拙論「『聴き合う』ことを通した音楽療法-H君の自由な表現に寄り添いながら」も収録されております。